『やりたいことが見つかる 世界の果てのカフェ』書評

人生に迷ったとき、人は答えを求めがちだ。だが本書『やりたいことが見つかる 世界の果てのカフェ』は、明確な答えを示す代わりに、読者へ三つの問いを静かに差し出してくる。

物語の主人公である男は、人生への迷いを感じた末、不思議な「質問カフェ」にたどり着く。そこで店員たちから投げかけられるのが、「あなたはなぜここにいるのか」「あなたは死を恐れるか」「あなたは満たされているか」という三つの問いだ。物語はこの問いを軸に、穏やかで時にユーモラスな会話を重ねながら進んでいく。

この本が印象的なのは、問いに対する一つの明確な答えが用意されていない点である。主人公が得るのは「正解」ではなく、人生の輪郭を少しずつ浮かび上がらせるヒントにすぎない。そしてその姿勢こそが、本書の最大の魅力だと感じた。まさに哲学!

人がこれらの問いに向き合い、人生を見つめ直すタイミングは、人によってまったく異なる。若い頃に立ち止まる人もいれば、仕事や家庭に追われる中で考える余裕のない人もいるだろう。あるいは、一生この問いと向き合わずに人生を終える人もいるかもしれない。本書は、その事実を否定も肯定もしない。ただ、「考えるタイミングが訪れた人」にだけ、そっと扉を開いてみせる。

特に「あなたは満たされているか?」という問いは鋭い。物質的には困っていなくても、どこか満たされない感覚を抱えて生きている人。逆に物質的な何かが自身を満たすに違いないと盲信している人。その違和感の正体を、他人や環境のせいにするのか、それとも自分自身の選択として引き受けるのか。この問いは、静かだが確実に心を揺さぶってくる。

この本を読んだからといって、人生が劇的に変わるわけではない。しかし、今の自分がどこに立っているのか、何を大切にして生きたいのかを考え始めるきっかけにはなる。問いに向き合う準備ができたとき、この本は初めて意味を持つのだ。

何かを変えたいと思いながらも答えを出せずにいた自分にとって、この本は「考え始めてもいい」と背中を押してくれる存在だった。

忙しさや不安の中で立ち止まれなくなっている人にこそ、人生を問い直す入り口として手に取ってほしい一冊である。

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