クリスティーン・ボラス著
――礼節は弱さではなく、生き残るための選択である
仕事をしていると、「正しさ」よりも「強さ」が求められる場面に出くわす。
その中で、礼儀正しく振る舞うことは本当に有効なのか。
『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』は、そんな疑問に真正面から向き合う一冊だった。
礼節を重んじる自分と、力強い教育を行う同僚
本書を読みながら、自分は職場で「礼節」を重視している側の人間だと改めて感じた。相手を萎縮させない言葉遣いや態度を意識し、できるだけ冷静に伝えることを大切にしている。
一方で、同僚の中には礼節よりも「力強い教育」を行う人もいる。正直、そのやり方に傷つくこともある。しかし、短期的には説得力があり、相手を動かしているように見える場面があるのも事実だ。その現実を前に、礼節だけで本当に人は育つのだろうか、という疑問も浮かんだ。
礼節だけでは足りない、という自覚
礼節のある行動は重要だが、それだけで全ての相手を育てきれるわけではない。そのことは、この本を読みながら改めて自覚している。ただ同時に、力強さを優先しすぎて礼節を欠いた言動が続けば、部下は萎縮し、結果的にパフォーマンスを下げてしまうのではないかとも感じた。
だからこそ、基本的には本書のスタンスに同意している。礼節は弱さではなく、長期的な人との関係を築くための戦略だという考え方は、現場にいる人間ほど実感を伴って理解できるものだと思う。
読み終えて見えた一つの整理
読み終えて考えたのは、教え方において「礼節」と「技術」は分けて考えるとよいのではないか、ということだった。
人として無礼な態度を取る相手には、厳しく、力強く線を引く必要がある。一方で、仕事の上で技術的に足りない部分については、礼節を重んじて教育する。その方が相手は萎縮せず、学びに集中できる。
礼節と力強さを対立させるのではなく、「何に対して強く出るのか」「どこで礼節を守るのか」を切り分けることで、両方の良さを取れるのではないかと思った。
さらに一段踏み込んで考えたこと
もう一段踏み込むと、仕事をして生きていく上で最も重要なのは、結局のところ人間関係なのだと思った。「この人が苦手」「コミュニケーションが面倒だ」といったネガティブな感情に従うのは簡単だが、長い目で見れば自分にとって損になる選択でもある。
人間関係に不満を感じたとき、環境や相手が変わってほしいと思うのは自然なことだ。しかし、自分が礼節を重んじないまま、周囲の環境だけが変わることはない。まず変えられるのは、自分の振る舞いだけだ。
この本を通して、自分が変わること、成長することが、結果的に周りの空気や関係性を変えていくのだという意識を再認識できた。礼節とは他人のためだけのものではない。自分がどんな環境で働き、どんな人間関係の中で生きていきたいかを選び取るための姿勢なのだと、今は感じている。


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